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三十三話 色んな感情

Author: Tubling
last update Huling Na-update: 2025-06-20 22:20:40

校長から想いを告げられた後、その日は庭園でゆっくりする気分になれなくて、邸に直帰した。

 部屋に戻って着替えもせずにベッドに横たわって、今日の出来事を色々と思い出す――――理事長がカリプソ先生と一緒にいるのを見るようになってから、何日経っただろう。

 私との約束を守ろうとしているのは分かっているのだけど、一緒にいるのを見る度に胸が痛む。

 そんな私にダンティエス校長が想いを伝えてきてくれた。

 あれは私を好きって事?

 私の心に入りたいと言ってくれて、チャンスがほしいと言われたけど……どう受け取れば良かったのだろう。

 真剣な表情に誤魔化す事も出来なかった。

 自分自身の為にも頑張りたいと言っていた校長の顔は、とても切実さを帯びていたので、すぐに答えを出すのをやめたのだった。

 これで良かったのよね?

 私の気持ちは恐らく変わらないだろうけど……きちんと向き合わなくては。

 そんな事を悶々と考えていると、セリーヌがバタバタと走ってきてドアをノックし、私を呼びにきたのだった。

 「お嬢様!王太子殿下がいらっしゃいました!」

 「ジークが?」

 今一番会いたくて会いたくない人の訪問に、思いの外動揺している自分がいる。

 私が悶々と考えている内に外は日が落ちていて、すっかり暗くなっていたので今日は庭園でお茶は無理ね。

 「ジーク」

 「ディア……遅い時間にすまない。急ぎで君に伝えておかなければならない事があるんだ」

 「急ぎで?分かったわ、もう外は暗いし私の部屋でいい?」

 「え?あ、ああ……そうだな」

 ジークの顔が若干赤いような気がする……そう言えば寝込んでいる時以外で部屋に招待するのは、転生してから初めてかもしれない。

 そう考えると途端に私も恥ずかしい気持ちになってきたのだった。

 変な意味はないんだし!屋敷には沢山使用人もいるし、何かあるわけじゃないから大丈夫よ。

 落ち着かない心臓を誤魔化すように心の中で言い訳をしながら、ジークを自室に連れて行ったのだった。

 ~・~・~・~・

 セリーヌがお茶を淹れてくれたので堪能しながら、さっそく彼に話を聞いてみる事にした。

 「私に急ぎの話って、何かあったの?」

 「ああ、今日もいつも通りカリプソ先生と話をしていたんだが……」

 いつも通り話を……2人が話をしているところを思い出して、また胸が苦
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